不動産担保 抵当権と根抵当権

リバースモーゲージの利用要件を見ると「借入申込者が居住している不動産に抵当権等の担保権が設定されていないこと」という項目が含まれています。今回は抵当権と根抵当権について詳しく解説したいと思います。

抵当権は担保物件

抵当権とは
債務者又は第三者(物上保証人)が、債務の担保に供した不動産や一定の権利などの目的物を担保提供者の使用収益に任せておきながら、債務不履行の場合にその目的物の価額から優先弁済を受けることを内容とする担保物件。
【法律学小辞典 第5版(有斐閣)より引用】

まず、「債務者又は第三者(物上保証人)が、債務の担保に供した不動産や一定の権利などの目的物」とあります。今回は不動産に抵当権を設定された場合を説明します。

お金を貸す代わりに、抵当権という権利を土地に設定します。抵当権を設定する土地の持ち主は通常はお金の借主であることが多いですが、自分の借金に対する抵当権を他人(第三者)の土地に設定することもできます。ただし、これは民法上のルールであって、その条件で納得するか否かは貸す側次第です(リバースモーゲージの場合は借主所有の不動産に根抵当権を設定する事を前提としています)。

そして、この抵当権が設定された土地は、「担保提供者の使用収益に任せる」とありますが、土地の所有者が好きに使えるという事です。

最後に「債務不履行の場合にその目的物の価額から優先弁済を受ける」とあります。これは抵当権を設定した不動産を売ってその価格から返済に必要な額を受け取れるという事です。競売物件という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、これはまさに抵当権が「実行」されて競売にかけられている不動産です。競売で売れた金額を貸主が借金の返済金額として受け取れます。

つまり、抵当権とは「借金が返せなくなったら、あなた(もしくは第三者)の不動産を売ってそのお金を借金の返済に充てますね。借金を返済している間は不動産は好きに使って構いません」という仕組みです。使用や処分はできるけど、実質は借金の「かた」に取られている状態です。かなり強力な権利と言えるでしょう。ちなみに「処分できる」と書きましたが、後々、不動産の売却代金で借金返済し、抵当権が消滅することを前提として、抵当権のついた状態の物件を売買するケースもあります。

 

住宅ローンと任意売却

この抵当権が設定されるパターンで最も多いのが、住宅ローンを組む時です。住宅ローンを組む時は通常、土地と新築された建物の両方に抵当権を設定します。この1つの債権(借金)に対して複数の担保権(ここでは抵当権)が設定されていることを「共同担保」といいます。

住宅ローンが返済できなくなると、債権者(貸した人)は抵当権を「実行」できます(裁判所に競売の手続きをしてもらいます)。競売されると通常の売買価格より安くなってしまう事が多いため、抵当権を実行せずに、債権者と債務者(借りた人)が話し合いをして、通常の不動産売却で処理をすることも多々あります(これを任意売却といいます)。

 

根抵当権について

抵当権は一千万円借り入れをしたら、「一千万円分の権利のある抵当権」を設定します(厳密には利息の関係もありますが省略します)。一回の借り入れ金に対して設定されます。

銀行取引などで、一度の取引では終わらず、確実に複数回の貸付返済が繰り返される事があります。この場合にいちいち抵当権の設定、抹消を繰り返していると手間と登記費用が掛かってしまうため、抵当権の代わりに「根抵当権」の設定をします。
この根抵当権とは、複数回の取引を前提として、「極度額」を設定します。

根抵当権は極度額を限度として、その担保する債権の範囲に属する確定した元本及び利息・損害金の全部を担保する。(民法398条の3)

「極度額を限度として」というのは、不動産の売却代金から極度額の金額までは優先的に返済が受けられるということです。

リバースモーゲージのシステムはまさにこれで、契約時に根抵当権を設定します。そして利用限度額は極度額を基準として各金融機関によって様々です。極度額までしか優先弁済を受けられないため、極度額以上に貸付をすると債権者が損をしてしまう可能性が高いので、極度額より低い金額を利用限度額としている場合がほとんどです。一定の条件を満たすと元本が確定します。元本確定とは、根抵当権の終了を意味し、終了時点でいくらの返済義務が残っているかを確定することです。
元本確定すると根抵当権は通常の抵当権と同じ状態になり、競売により強制的に弁済を受けることができます。

 

リバースモーゲージ利用の際は抵当権・根抵当権の仕組みをよく理解して計画的に活用することが大切です。

空き家についての相談は、お電話(03-6272-5376)または問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
業費用および業務の流れについてはこちらをご覧ください。