特定空家等に対する措置 【指導~代執行まで】

空家法の9条に市区町村長が、空家等の所有者等調査や立ち入り調査ができる旨の定めがあります。立ち入り調査は「特定空家等」に該当するか否かを判断するためのもので、この立ち入り調査を拒んだり妨害した場合には過料として20万円以下の金銭罰に処されます。

特定空家等の所有者等に対して、市区町村長は必要な措置を取るように指導や命令をします。従わない場合には最終的に「行政代執行」を行います。代執行までの流れは以下の通りです。

①助言または指導
②勧告
③命令
④行政代執行

※「行政代執行」とは、行政上の強制執行の手段です。本人が義務を果たさないため、行政が代わりに行い、費用を徴収します。

①~④までの手続きを個別に見ていきます。

 

①助言または指導

市区町村長は、特定空家等の所有者等に対して、除却、修繕、立木竹の伐採をはじめ周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置を講ずるよう「助言または指導」することができるとされています。
「特定空家等」の状態を改善するために「~した方がよいですよ」「~してください」と伝えるイメージです。助言または指導は口頭・書面で行う事ができます。

 

②勧告

市区町村長は、助言・指導をしてもなお特定空家等の状態が改善されない場合「勧告」をすることができます。この勧告を受けることにより、土地について「住宅用地に対する固定資産税等の課税標準の特例」を受けている場合、この特例から除外されることになります。

※簡単にいうと、住宅用地という理由で安くなっていた固定資産税が、勧告を受ける事によって、住宅用地とみなされなくなり高くなってしまいます(最大で約4.2倍程度)。

 

③命令

市区町村長は、勧告を受けた者が正当な理由なくその勧告に係る措置を取らなかった場合、特に必要があると認めるときは、相当の猶予期限を付して勧告に係る措置をとることを命じることができます。この「命令」に違反すると過料として50万円以下の金銭罰に処されます。

 

④行政代執行

市区町村長は、命令を受けてもなお措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても命令で定めた期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法の規定に基づき、代執行を行うことができます。

※代執行の費用については、国税滞納処分の例による費用の徴収が認められているため、本人が支払いをしない場合は、強制執行により回収されます。

 

 

行政代の手順

以下の手順に沿って特定空家等に対する代執行の手続きは進みます。

①文書による戒告
②再戒告
③代執行令書による通知
④代執行

個別に手続きの内容を見ていきましょう。

①文書による戒告

相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨をあらかじめ文書で戒告します。期限については、当該措置を履行することが社会通念上可能な期限とされています。

 

②再戒告

戒告に定められた履行期限までに履行がされない場合に、市町村長は再度戒告を重ねることも「認められる」とされています。

 

③代執行令書による通知

戒告に定められた履行期限までに履行しないときは、市区町村長は、代執行令書をもって義務者に下記の事項を通知します。

・代執行をなすべき時期
・代執行のために派遣する執行責任者の氏名
・代執行に要する費用の概算による見積額

※行政代執行法3条3項には、非常の場合または危険切迫の場合において、当該行為の休息な実施について緊急の必要があり、文書による戒告及び代執行令書による通知の手続きをとる暇がないときは、その手続きを経ないで代執行をすることができる旨が規定されています。

 

④代執行

定められていた履行内容が代執行されます。

 

 

略式代執行について

特定空家等の所有者等に対し、必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられる者を確知することができないときであっても、市区町村長はその者の負担において、その措置を自ら行い、または命じた者もしくは委任した者に行わせることができます。これを「略式代執行」といいます。

略式代執行をする場合は、相当の期限を定めて、「当該措置を行うべき旨」「その期限までにその措置を行わないときは、市区町村長またはその措置を命じた者もしくは委任した者がその措置を行うべき旨」をあらかじめ広告する必要があります。

※所有等に連絡が取れないので、市区町村の掲示板、官報に掲示して「伝えた事にしてしまう」ようなイメージです。

 

以上が助言・指導~代執行までの流れです。助言・指導を受けた時点で適切に対応できれば固定資産税が高くなることもなく、代執行もされません。
指導を受ける前の早めの対策をお勧めいたします。

 

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