民泊とは、住宅を宿泊場所として提供するサービスをいいます。民泊を反復継続して有償で行う場合、つまり「商売」として行う場合は、法律に基づいた許可を取る必要があります。
これまでの法律では「旅館業法」の許可が必要でしたが、近年新しい法律ができ、民泊の許可を取る方法の選択肢が増えました。
民泊の種類
- 旅館業型民泊
旅館業法に定められた、旅館・ホテル棟の営業許可を取る方法です。厳しい基準が定められているため、許可取得のハードルは高くなります。
旅館業法には3つの営業種別が定められていて、各営業種別によって許可の基準が異なります
- 旅館・ホテル営業
いわゆる「旅館」と「ホテル」の営業です。
1日単位での宿泊が可能、1室の床面積は7㎡以上必要、玄関帳場の設置義務などの決まりがあります。建築基準法、消防法におけるホテル又は旅館の項目条件をクリアしている必要があります。また、都市計画法による用途地域の制限も受けます。
- 簡易宿所営業
宿泊場所を多人数で共用する構造設備のある宿所の営業です。
1日単位での営業が可能、1室の床面積は33㎡以上(10人未満が定員の宿泊施設の場合は1人あたり3.3㎡以上)必要です。建築基準法、消防法におけるホテル又は旅館の項目条件をクリアしている必要があります。
- 下宿営業
1ヵ月以上の期間を単位とする宿泊営業。定期借家制度ができたことにより減少傾向にあると考えられます。1月単位の宿泊施設のために許可を取るよりも賃貸借契約を結んだほうが簡単だからです。
旅館業法は平成30年より規制が緩和され、以前より許可取得のハードルは下がりました(最低客室数や洋室、和室の基準など)。しかし、民泊事業は、もともと住宅として建てた建築物を利用して、旅館・ホテル営業の許可を取得しようとするため、住宅建築時には想定していなかった用途地域の規制や設備面の不備で許可を取ることが困難な場合があります。
- 特区民泊
旅館業法の厳しい規制を緩和し、住宅を宿泊施設として活用することを目的とした、国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例措置です。平成30年8月現在、東京では大田区のみで実施されています。
国家戦略特区の指定区域には、国、地方公共団体、民間の三者から「区域会議」という組織が設置されます。この区域会議で特区民泊をについて定めを作り、内閣総理大臣の認定を受けると指定された地域での特区民泊の営業が可能となります。
ただし、運営するうえで、旅館・ホテル営業とは異なる規制がありますので注意が必要です。最低滞在期間の日数制限や、契約形態が賃貸借契約となるなどが大きな違いです。また、賃貸借契約を結ぶため、自宅の一部に宿泊させ、家主が同居するスタイルの営業は認められません。旅館・ホテル営業許可と同じく、建築基準法、消防法、都市計画法による規制を受けます。
現状では特区民泊が実施されている区域が極めて少なく、また実施区域であっても建築基準法や消防法などで定められた様々な条件を満たす必要があります。賃貸借契約によるものであり、本来であれば1月未満の賃貸借契約は旅館業とされますが、その例外となる規定です。
- 住宅宿泊事業(新法により可能となった選択肢)
平成30年6月15日より住宅宿泊事業法という法律が施行されました。この法律が施行されたことによって、住宅宿泊事業者の届出をすると、旅館業法の規制対象外となります。ただし、住宅に人を宿泊させる事業であること、年間の営業日数が180日を超えないことなどの条件があります。また、消防法上の規制を受けます。
一口に民泊といっても様々な法律が絡み手続きは非常に複雑です。
また、民泊を推進するために新法が施行されましたが、営業日数の制限や消防法による制限があったりと、まだまだハードルが高いように感じました。