離婚するときの絶対条件として、子供の親権を決める必要があります。親権についてのお互いの意見が食い違い、裁判に発展することもあります。親権とは法的に、どのようなものなのでしょうか。
親権とは
親権とは、子供の利益を守るためにもつ権利のことであり、父母が未成年の子を一人前の社会人になるまで育てるため、子を監護教育し、子の財産を管理することを内容とする親の権利義務のことです。
結婚していれば父母が共同して親権を持ちますが、離婚したときには、協議により父母の一方を親権者に定めることになります(民法819条1項)。夫婦で合意できなければ裁判所に判断をゆだねることになります。
協議離婚の場合は、夫婦の話し合いで自由に親権者を決められますが、調停や裁判では、さまざまな観点からどちらが子供の利益を守るうえで適任であるかが重視されます。特に子供の年齢については、以下のような判断基準の目安があります。
【胎児の場合】原則として母親が親権者になります。
【0歳~10歳未満】母親の愛情と世話が重視されるため、母親が親権者になることが多いです。
【10歳~15歳未満】子供の精神的、肉体的な発育状況が考慮されます。現在の監護状況や子供自身の意見を尊重する場合もあります。
【15歳~20歳未満】原則、子供の意見を尊重して決定します。
その他にも、これまで主に子育てをしてきたのはどちらか、親族等の周囲の助けを期待できるか、子供に対する愛情があるか、なども判断基準として重視されます、
親権と監護権
親権の内容は、「財産管理権」と「身上監護権」の2つの権利に分かれます。財産管理権とは子供の財産を管理したり、進学や就職などの際に子供に代わって法的な手続きをする権利です。身上監護権は、子供を保護・教育する権利です。
離婚をする際にこの「財産管理権」と「身上監護権」を分けて一方の親が親権者として財産管理権を持ち、もう一方の親が看護者として身上監護権を持つことができます(民法766条)。
離婚後の親権者変更について
親権者を変更するには、家庭裁判所の許可が必要になります。ただし、一度決めた親権は簡単には変更できません。家庭裁判所にて現状では子供の福祉上、好ましくないと判断された場合に親権の変更が認められます。育児放棄や経済的に教育ができる状況でない場合、親権者でない方の親が子供の世話をしている場合などに親権者の変更を申し立てることができます。
親権の喪失・停止
親権者のせいで子供の利益が著しく害されているときは、家庭裁判所に審判を申し立てて親権を喪失させることができます。ただし、2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、親権停止制度の利用となります(民法834条、834条の2)。
親権喪失原因の主なものとしては、
・身体的虐待
・性的虐待
・ネグレクト
・心理的虐待
などが挙げられます。
未成年後見
親権喪失・停止、親権者の死亡などにより親権を行う人がいなくなった場合は、未成年後見が開始するとされています(民法838条)。しかし、実際には親族や知人が未成年者の世話をしていることが多いため、代諾縁組や遺産分割などで未成年者の法定代理人が必要になった時に初めて後見人選任の請求がなされることが多いです。
親権については子の利益を最優先に考えるべきです。協議離婚の際には、子供の意見を聞き、客観的に状況を見て、冷静に話し合う事が大切です。