【遺言書について②】

前回に引き続き、遺言書についての解説をしたいと思います。
遺言書によってどのような法律効果が発生するのでしょうか。

相続分の指定

被相続人は遺言によって共同相続人の相続分を指定したり、この指定を第三者に委託することができます(民法902条)。

遺贈

遺贈とは、遺言によって無償で財産を他人に与える行為です。遺贈により利益を得る人を受遺者といいます。法人や胎児にも受遺能力があります。また、相続人も受遺者になることができますが、相続欠格者は受遺者にはなれません(民法965条)。
遺贈に似た規定として、「死因贈与」があります。死因贈与は、贈与者と受贈者の契約によって成り立ち、贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与です。つまり、被相続人が生前に受贈者と諾成契約を結ぶことが必要になります。一方、遺贈は、遺言者からの一方的な行為となります。

特定遺贈と包括遺贈

特定遺贈とは、遺産の中の特定の財産を与えることです(特定の不動産や株券500万円分などと指定します)。
包括遺贈は、遺産の全部または一定の割合(遺産の3分の1など)で示された部分を与えることです。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することになります(民法990条)。

遺贈の承認と放棄

包括受遺者の場合は、相続人と同一の権利義務を有することから、相続人と同じく相続の放棄・承認の規定が適用されます。したがって、自己のために包括遺贈があることを知った時から3ヵ月以内に放棄の申述をしなければ、承認したものとみなされます。
一方、特定遺贈の場合は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈を放棄することができます(民法986条)。

遺贈の無効

遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合には、遺贈は効力を生じません(民法994条)。遺言を残す際に、受遺者が先に死亡した場合を考慮して予備的な遺言を作成することもできます。

負担付遺贈

遺言者は、受遺者に一定の義務を課して遺贈をすることができる。これを負担付遺贈という。例えば、一定の額を遺贈する代わりに未成年の子の学資を負担させたり、生存配偶者の介護を義務づけたりします。この場合、受遺者は遺贈の目的の価額を超えない限度で、負担した義務を履行する責任を負います(民法1002条1項)。
受遺者が負担加重だと思えば、遺贈を放棄することができます。その場合には、負担の利益をうけるべき者(受益者)は自ら受遺者になることができます。つまり、受遺者Aが受益者Bの介護を負担とした遺贈を受けた場合、Aが遺贈を放棄すると、Bが受遺者になることができます。

 

遺言の残し方によって様々な法律効果が発生します。遺言書の書き方についてお悩みなら専門家へご相談ください。