遺言とは、遺言書を残した人の最終の意思表示であり、その人の死後に効力を生じさせる制度です。
遺言を残すことによって、自分の所有する財産を死後であっても自由に処分ができます。遺言のない場合に、民法で定められた「法定相続分」によって相続されることになります。法定相続人に全く遺産を渡さない内容の遺言書も有効なのです。
ただし、「遺留分」という制度があり、兄弟姉妹以外の法定相続人には相続財産の一定部分を請求する権利があります。後々のトラブルを回避するためにも、遺言書を作成する際は、遺留分を考慮したうえで作成しましょう。
今回は遺言について、民法で定められたルールを解説したいと思います。
遺言に必要な能力とは
15歳以上になれば遺言を残せると、民法961条に定められています。遺言を残すためには、遺言の内容を理解し、結果を認識するだけの能力が必要であろうという趣旨のもと定められたルールです。また、15歳以上であっても、遺言内容を理解し結果を認識する能力のない人は遺言を残せません。
民法963条に“遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。”と書かれていますが、遺言能力についての明確な記載はありません。過去の裁判例やその時の状況等から判断されます。
遺言の方式 代表的な2つの遺言
- 自筆証書遺言
遺言者が、その全文、日付、氏名を自書し、押印します(民法968条1項)。自筆できる人であれば、誰でも遺言者単独で作成できるので、簡便で費用もかかりません。しかし、遺言書を管理する人が定められていないため、遺言者の死後における偽造・破棄などのおそれがあります。また、遺言者に法律知識がない場合には、内容が不明であったり、方式上の要件違反をしやすく、遺言の効力をめぐって紛争となることがあります。
自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所の「検認(存在及び内容の確認)」が必要になります。
- 公正証書遺言
遺言者が公証人役場に行くか、公証人に出張を求めて、公証人に作成してもらう遺言です。作成手順に以下の決まりがあります(民法969条)。
・承認2人以上の立ち合い
・遺言者が遺言の趣旨を口授する(口頭で伝える)
・公証人が遺言者の口授を筆記し、これを遺言者および公証人に読み聞かせ、または閲覧させる
・遺言者および証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押す
・公証人が、民法所定の方式に従って作成したものであることを付記し、これに署名し印を押す
証人資格について定めがあります。推定相続人・受遺者およびその配偶者・直系血族は証人になることができません(民法974条)。
公正証書遺言書の原本は、公証役場に保管され、遺言者には正本が交付されます。また、利害関係人は原本の閲覧や謄本の交付を請求できます。
公正証書遺言は家庭裁判所の検認は不要です。
共同遺言の禁止
2人以上の人が同一の証書で遺言をすることはできません(民法975条)。夫と妻の共同遺言などを残すことはできません。
遺言の撤回
遺言者はいつでも遺言の方式に従って撤回することができます(民法1022条)。
公正証書遺言を作成した後に、自筆証書遺言で撤回することも可能です。