平成30年7月13日に民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が公布されました。
その中に配偶者の居住権を保護するための方策として「配偶者居住権」が新設されました。施行日は公布の日から2年以内となっていますが、配偶者居住権の制度についてまとめてみたいと思います。
目的は配偶者の保護
残された配偶者が被相続人の所有している建物に相続開始後も住み続ける場合、これまでは建物の所有権を相続して建物に住み続ける事が通常でした。しかし、不動産を相続したため、預金や現金の相続分が減ってしまい、その後の生活が不自由となる場合がありました。この問題を解消し配偶者を保護するために配偶者居住権の制度ができました。この制度は、新しい民法で定められた要件を満たすと、所有権が無くても「配偶者居住権」という権利のもとで相続財産である建物に住み続けられます。そして、所有権より配偶者居住権の評価額は安くなるので、所有権を相続した場合よりも他の相続財産(預金等)を配偶者が多く相続できるのです。
※出所「法務省ホームページ」
配偶者居住権が成立するための要件
新民法1028条に新設された条文です。
1項 被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
1号 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
2号 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
2項 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
対象の物件に住んでいた場合であって、「遺産分割で配偶者居住権を取得した場合」または「配偶者居住権が遺贈された場合」に配偶者居住権を取得することができます。さらに、条文の但し書に「被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。」とあります。
整理すると、
②配偶者以外の共有者がいないこと
③遺産分割または遺贈によって配偶者居住権を取得すること
以上3つを満たしている場合、配偶者居住権が成立します。
今回の相続法改正で、他にも新しくできた規定があります。次回以降のブログでまとめていこうと思います。