第1種動物取扱業者に課せられる責務【動物愛護法】

都道府県知事等より登録証が交付された後、第1種動物取扱業の営業が可能となりますが、様々な責務が課されます。

【標識の掲示】

第1種動物取扱業者は、事業所ごとに、公衆の見やすい場所に標識を掲げなければなりません(動物愛護法18条)。標識に記載する内容は以下の通りです。

  • 第1種動物取扱業者の指名
  • 事業所の名称・所在地
  • 登録にかかる第1種動物取扱業の種別
  • 登録番号
  • 登録の年月日および有効期間の末日
  • 動物取扱責任者の氏名

標識を掲げない場合には、10万円以上の過料に処せられます(動物愛護法50条)。

 

【飼養等の基準の遵守】

第1種動物取扱業者は、動物の健康・安全の保持等のために動物愛護法21条にさだめられた基準を遵守しなくてはなりません。具体的な部分は施行規則の8条に定められています。

【動物取扱責任者】

第1種動物取扱業者は、事業所ごとに、1名以上の常勤の動物取扱責任者を選任しなければなりません(動物愛護法22条)。

【感染性の疾病の予防】

第1種動物取扱業者は、取り扱う動物の健康状態を日常的に把握し、必要に応じて、獣医師による診療を受けさせ、ワクチン接種などその取り扱う動物の感染性の疾病の予防のために必要な措置を適切に実施するように努めなければなりません(動物愛護法21条の2)。「努めなければ」という言いまわしになっています。これは「努力義務」とよばれるものです。努力義務は法的な罰則などはありませんが、行政指導の対象になることはあります。

【販売時の情報提供】

第1種動物取扱業者のうち、哺乳類、鳥類、爬虫類に属する動物の販売を業として営むものは、動物を販売する場合に、あらかじめ顧客に対して、動物を直接見せるとともに、対面により、書面等で、どの動物の飼養・保管の方法など必要な情報を提供しなければなりません(動物愛護法21条の4)。

この規制により、インターネット上のやりとりだけで販売することはできません。説明が必要な情報は施行規則8条の2第2項に定められています。

【都道府県知事等による勧告・命令】

第1種動物取扱業者が、基準を遵守していないと認めるとき、都道府県知事等は、改善するように勧告することができます。勧告に従わないときは、勧告についての措置をとるように命じることができます。その命令に違反したとき、罰則が科されます。

【犬猫販売業者の責務】

犬猫等販売業者として登録された場合、動物愛護法22条の2~22条の6に定められた事項も守らなくてはなりません。

  • 犬猫等健康安全計画の遵守

申請時に策定した計画の遵守が義務付けられます。違反した場合は罰金に処せられることがあります。

  • 獣医師との連携確保

かかりつけの獣医師を確保する必要があります。獣医師との連携状況は犬猫等健康安全計画に記載すべき事項です。

  • 販売困難な犬猫についての終生飼養の確保

終生飼養とは、犬猫の命の最後まで飼養・保管することです。犬猫等販売業者が都道府県等の動物愛護センターなどに犬猫の引き取りを求めた場合、都道府県等は、引き取りを拒否することができます。犬猫等販売業者の従業員などが、終生飼養の確保の義務に反して、犬猫を殺した場合には、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられます(動物愛護法44条1項)。犬猫を遺棄した場合には、100万円いかの罰金に処せられます

  • 45日齢以下の販売制限

犬猫を幼齢期の早期に親兄弟から引き離した場合、十分な社会化が行われず、問題行動を引き起こす可能性が高まります。これを防ぐために、繁殖を行っている犬猫等販売業者は、出生後56日を経過していない犬猫の販売をしたり、販売するための引渡しや展示をしたりすることはできません(動物愛護法22条の5)。

※ただし、附則により現在は49日の規制となっています。

  • 帳簿の作成・保存

犬猫等販売業者は、飼養する犬猫の個体ごとに、所有を始めた日、販売日、死亡日などの事項を帳簿に記載し、5年間保存しなければなりません(動物愛護法22条の6第1項)。記載事項については、施行規則10条の2第1項に定められています。

帳簿を作成しなかった場合、虚偽の記載をした場合等は20万円以下の過料に処せられます(動物愛護法49条2号)。

 

  • 所有状況の定期報告

犬猫等販売業者は、毎年度、年度末から60日以内(5月30日まで)に、登録を受けた都道府県等に、前年度の犬猫の所有数などを届け出ることが必要です。新たに第1種動物取扱業の登録を受けた場合には、登録を受けた日からその年度の3月31日までの期間の犬猫の所有数などを、5月30日までに届け出ることが必要です。

定期報告書の届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりした場合、20万円以下の過料に処せられます。

 

  • 購入者に対しての情報提供

犬猫等販売業者は、販売に際して、販売する動物の飼養・管理方法や生年月日、繁殖者名簿当の情報を、購入者に提供しなければなりません(動物愛護法21条の4)。